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いつも鞄に入れて持ち歩いているもの。 たまにブックカバーがかけられたりする。
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「おわったー!!」

とりあえず二日間のセンター試験は終わり、会場からの帰り道。
従兄に終了報告の電話をすれば、迎えに来てくれるというので近くの駅で待ち合わせをした。
改札の傍で同じ受験生の波を見送りながら、とりあえずはなんとかなったかなあとぼんやり。
そっと胸元からピンクのリボンを引っ張る。
ホイッスルと一緒に首からかけていたお守りを取り出して眺めれば、頬緩めて。
向こうは大丈夫だったかなーなんて考える。

「いや絶対大丈夫だよなあ……」

私より余裕ぽかったし!と頷き。気を使ってもらってしまったくらいだったのを思い返し。
寧ろ人の心配してる場合じゃなく来月の二次試験に向けてまた頑張らねばだよね。
再度胸元にホイッスルごとお守りをしまえば、従兄が来るまでまた単語帳を捲っていた。

 

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「なんでまってもうえええこんな時間なのー!?」


その日は悲鳴から始まった。
昨晩までの雨も上がって爽やかな青空が広がる朝、陸雛子の心中は爽やかとは程遠く。半分涙目になりながら自室を飛び出して慌しく階段を駆け下りる。
台所に滑り込みとりあえず電気ポットの再沸騰のボタンを押して八枚切りの食パンをトースターにセットしながらくるりとターン、もう一度二階まで一段飛ばしで駆け上がれば、なんだなんだとひよこたちも起き出して来て。
構うことなく階段を登りきって右側、洗面台で洗顔に歯磨きを済ませ、じぃーっと鏡の中の自分を見つめた。

「……目腫れてるよね」
「正確にはまぶたが腫れてるわね」

答えが帰ってきて思わずまじまじと鏡の中の自分…ではなく、その頭の上にいるねむたげなひかりに意図せず睨むような顔をする。
意図せず、というのはまぶたが腫れて目が酷いことになっているからそうなってしまっている、ということである。
やっぱりそう見える?と弱弱しく問えばもう一度似たような答えが返ってきたので、ひかりをそっと頭上から下ろして再度一階へとダッシュ。
トースト完成のベルが鳴ると同時に電子レンジに濡れタオルをつっこみ、焼きあがった食パンにマーガリンを塗って、もう温くてもいいやとマグカップに沸騰途中のお湯と粉ココアを投入。
そのまま台所で朝ごはんを済ませてしまうお行儀の悪さを発揮しつつ、カップを流しに置いた後丁度いいくらいになった蒸しタオルを持って居間へと。
ソファに座って蒸しタオルを目に当てて一息つけば、自然と思考は昨日のことへと移行する。


告白したんだ。
好きって言ったんだ。


じわじわと実感が広がってきてうあーとかあーとか身悶えするような声を洩らして足の先をばたばたさせる。昨晩もそんな感じで暫く眠れなかった。
そもそも、そんなすぐに告白しようとは思っていなくて。ただ、その前の晩に見た夢が、

『好きだよ』
『ごめんそういう風に見たことない』

なんていう酷く簡潔でリアルで悲しく滑稽な告白風景だったからつい我慢できず、まったくもって相手にとっては唐突かつ意味のわからないタイミングで言ってしまった。
好きな人に意識されてない、というのはある種のコンプレックスのようなもので、決して当人に言われたことのある言葉ではない。
なのになんであんなのリアルだったのだろうと記憶を手繰ってみれば、中学の時の告白玉砕が思い当たる。
そういえば先輩にそんな風に言われたっけ、とばたばたさせていた足を止めれば蒸しタオルを外す。
私だって、女の子だ。やや温度を失ったタオルをぎゅっと握って呟けば、そうだよね、といつの間にか降りてきていたひかりの声が耳に届く。でも、もっと気にした方がいいところもあると思うわ。そうもひかりは続ける。
……え?
ずっと圧迫されていたためぼやけている視界で捉えた腕時計の針を見て――― 本日二度目の悲鳴が陸家に響き渡った。

 

 


「あー、やっぱり早起きして髪の毛くらいどうにかすればよかったかなあ……!」


学生鞄をかけた方の手ではねている髪の毛を引っ張ってそんなことをぼやく。
なんとか目の腫れをひかせ、あとは制服に着替えて行ってきますするだけで精一杯だったため、早歩き大会を開始せざるを得なかったのは数分前のこと。
待ち合わせ場所に遅れないようにするにはそんなことをしている暇は当然なかったのだが、となるとやはり悔やまれるのは起床時刻。
ただでさえ洋服が女の子らしくないと男女どちらか一瞬迷う、と言われているのだから少しは気を配るべきだったろうか。
むう、と口を尖らせつつも朝からのフル稼働で徐々に息が切れてきていたので、少し速度を落として深呼吸とばかりに冷たい冬の空気を大きく吸い込む。
眠気や疲れや悩みとか、なんかそういうものがクリアに冷えてゆく感覚。

……いい天気だし、ところどころに残っている雨粒はきらきらして綺麗だし、空は青いし。
何より、待ち合わせ場所には想い人がいるんだ。
好きがどうとか、意識されてるがどうとか、女の子らしさとか。そういうのはもう置いておいていいんじゃないだろうか。
だって。

「…………可愛いって言ってもらったじゃんね」

その時の気持ちを反芻するように簡単に熱くなった胸をぎゅっと押さえる。
我ながら単純だとは思うが、そもそも変に昔のことを思い出してぐちゃぐちゃ悩み過ぎたのだ。
特に飾らない自分を認めてくれていたのなら、いつもの顔でゆけばいいのではないか。
それにしたってかまわな過ぎるのは違う気もするけれど、まあ、明日頑張ろう。

よしッ、と頬を軽く叩いて気合を入れなおし、今度は駆け出す。
弾む息にあわせてだんだんと気持ちも弾んでくる。
いつもは真直ぐ行く道を右に曲がり、坂を上ってゆけば良く知る後姿と青空に真っ白く光る雲が見えて。
おはよう、と笑顔で駆け寄れば、照れたような笑顔と共に挨拶が返ってきた。


 

「うーん…」

自室のベッドにごろんと転がりながら、私は考えていた。
何をか、と言えば。
昨日の放課後に散野君が提案したエイプリルフール企画について考えていた。
一人1つ嘘をついて、「それはあり得ないだろう」と突っ込まれたら勝ち。実施は昼休み。
そんな内容の企画だ。

「でも、この町であり得ないことって結構少ない気がするんだ…」

というわけで、私はその話すための嘘が思い付かずに悩んでいた。
例えば、「私は実は鳥でした!」と言ったところであり得ないとは言ってもらえないだろうし(不本意ではあるけれどそれが現実)、逆に「私は純粋な人間です」と言ってあり得ないと言われたらもうどうしていいかわからない。
というかどこかで既に「実は陸雛子は人間でした」と嘘ではないことを嘘として扱われていそうな気がする。
そろそろ泣いても良いだろうか。


結局、まともな嘘を思い付かなかったため一睡もできずに学校に行き、昼休みに企画の集まりで堂々と居眠りをしてしまう結果に終わった私のエイプリルフール。
夢うつつで全然皆の話を聞いてなくて後で怒られました。ごめんね。










「起きないからおピヨはそっとしといて、早速はじめようぜ!」
「「「おー!」」」
「んじゃーまずはカイト!」
「普通最初は企画者だよな!?」
「いーじゃんいーじゃん」
「覚悟決めなさいよ」
「わかったよ…じゃあ『白角先輩がかしこくなくなった』」
「それはあり得ないのですー…」
「話をしたらなんとやら!?」
「噂な」
「ぴー…」
「…おはぎたべる?」
「おキヌがキュンキュンしてる」
「ていうかここ、青春…」
「またあざぎりが惨劇を引き寄せたのか…」
「違えぇぇえええ!!あと、あざぎり言うな!」
「わたしはいつもどこかにいるのですー…」
「どこにもいない方がおかしいな」
「ん、んじゃーつぎっ!おシヅ!」
「え、わ、私?えっと……『実は私、人間じゃないんです』」
「陸だったら納得していたな…」
「祐お前それそろそろヒナ泣くんじゃ…」
「じゃあ八巻さんは何だったの?とか」
「人間だったの、なんてね」
「み、ミステリアスガール…!」
「まあおシヅが可愛い女の子なのはみんなわかってるかんね!」
「!?」
「おお、救助大胆だな…!」
「変な意味じゃないよ!?よしじゃあ次はおキヌ!」
「『今年は正義に生きる』」
「悪の組織の存在意義が根本的に揺らぐなそれ!?」
「でもまあ、灰島は悪なりの正義を貫きそうだけどな」
「あー、なんとなくわかる」
「なんか照れるね……んで、キュースケの嘘は?」
「『隣の家に塀ができたんだってさ』!」
「ふうん」
「即座にボケ殺しするのやめて!?」
「寧ろ企画者がそれはどうなんだよ!?」
「嘘でも何でもないよな」
「もしかして、一晩考えてこれ…?」
「もしくはこれが思いついたからの企画…?」
「何その大ブーイング!?酷いや!!」
「まあ⑨だから仕方ないな」
「まあね!」
「仕方ないね」
「本当に散野君は可愛いね…」
「おシヅだけだよ味方は…!」
「いや、それは本当に味方としての発言なのか…」
「そんじゃータスクはどうなんだよ?嘘考えてきたのかっ!?」
「『今日から時給1000円が保証された』」
「「「それはあり得ないだろう」」」



という夢を見た気がするんだ。



(捏造しきれない捏造エイプリルフール)
雛子W:ソフトキャンディ。
「ホワイトデーだし、ミルクキャンディ!……を、15日にお返しするつもりです」


微塵W:飯が旨いようなしょっぱいような
「世の中のモテ男共精々苦労しやがれ」


すっかり忘れていたので縮こまる陸と、やはり哀しい男たちの仲間入りをしている木端。
雛子V:カラフルチョコ+α
「いつもの皆へのチョコはコースターと一緒にしてみたんだ」

微塵V:え?何それ旨いん?
「知らねーよんなモン別に貰う当てがねえから忘れようとしてるわけじゃねえし喧嘩上等いつも通りだぜ俺はマジでマジで」


個別には色々仕込んでる陸と、哀しい男たちの仲間入りをしている木端。
「ようし買った……!」







「これどうしたの」
「明日バレンタインだからチョコ作ろうと思って!」
「お菓子業界に踊らされてる感がするのよね…」
「一緒に作ろう?」
「作る…!」

主に接近戦で戦うひととやってみたいなあっていうのと。
後はやったことなかったなあっていうのと。
他色々あって、星野尾君に手合わせを申し込んでみました。
放課後すぐは天羅のお仕事とかもあるし、っていうことで夜の九時に空き地で約束。
「一月十三日午後九時空き地で待つ!」なんてまるで決闘みたいだなあとちょっと笑ったり。


予想外にっていうか予想してなかった私がいけないんだけど暗くて寒くって始まる前から何かに負けた気分になりつつ。
でも物凄いモノローグと共にやってきた星野尾君とコートを貸してくれた霧夜ちゃんのおかげで寒さはすぐに意識の外に行って、


(何度か書いて消した跡が残っている)


課題以上のものの端っこを見つけられた手合わせだったなと思った夜でした。
元の課題はまだまだ問題山積みだけど!私が攻撃された時の対処って難しいや……


今年はハロウィンに顔出しもできなかったから。
みんなに耳をつけてまわっちゃうんだよ!
……え、私の分は作ってくれたの?(受け取りながら)
選ばれなかった自分の精一杯、死に物狂いの血反吐のようなそれはいつか落ちて返ってくると理解していても。


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プロフィール
HN:
陸雛子
年齢:
32
性別:
女性
誕生日:
1992/05/29
職業:
学生
趣味:
刺繍
自己紹介:
最近夢をよく見るんだ。
ファンタジーな夢。
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